花粉症をひも解く
2015.02.12
1.国のスギ植林政策の誤算?

スギは日本の風土に適した樹木であるとともに、材木としての利用価値が高いため昔からスギ林業が営まれてきました。特に、第二次世界大戦後の経済復興の一環として「拡大林造」政策がとられ、荒れた山にスギの植林が盛んに行なわれ、急速にスギ人工林が増加しました。現在その時期に植林されたスギが成長し大量の花粉を飛散させています。さらに安い輸入材に押され林業人口が減少したこと、枝打ちなどの管理が十分でないこと、伐採が進まないこともあり大量のスギ花粉の発生は当分続くようです。

2.手助けしている知られざる犯人を探せ!

“スギ花粉の飛散の多い郡部より都心部での患者が多い”というデータが示すようにディーゼルエンジンの排気ガス(DEP)に含まれる微粒子が犯人と言われています。
DEPが体内に入ると通常の3〜4倍も抗体が生み出され花粉に敏感に反応するようになってしまうようです。アスファルトに覆われた都会ではいつまでも土に吸収されず何度も舞い上がることも追い討ちをかけています。どこかの都知事のディゼルカーから出る排煙に関する規制は花粉症患者を守る法律とも言えそうです。(私が都民なら1票を投じます。)

3.救世主は寄生虫?(〜人類は旧友を忘れてしまった)

寄生虫研究家の藤田紘一郎先生によると、最近のアレルギー性疾患の増大は人類の長い歴史の中でわれわれを守ってきた菌や寄生虫を遠ざけて生活するようになったことが原因と行き過ぎた清潔志向の危険性に警笛を鳴らしています。衛生状態の悪い戦後直後に生まれた回虫などの寄生虫経験者は花粉症にならないのだそうです。なぜなら、回虫が抗体の攻撃を回避するために作り出す「非特異的Ige抗体」という物質が肥満細胞の周りを覆っていて、体内に花粉が浸入してもヒスタミン等を放出できなくなっているからだそうです。つまり、高度成長期以降の「きれい社会」に育った世代は、土や動植物に触れる機会が少なくなったために免疫細胞が未発達なのです。とは言っても意図して寄生虫を薬代わりに飼う決断は私にも出来ません...

〔おまけ1〕アレルギーとは?

アレルギーという言葉は1906年にオーストリアのピルケというお医者さんが言い始めた言葉だそうです。語源はギリシャ語でAllos(変化したという意味)とergon(反応あるいは能力)という二つの言葉をくっつけて作り出したとされています。
「体の中に、外から自分の成分と異なる物質(抗原:花粉、病原菌、毒素など)が一度入り込むと、生体はこれに反応して抗体を作り出す。再び抗原が入り込んだ時体は最初とは違う全く変化した反応を示すようになる。」例えとしては適当でないかもしれませんが、ドロボウに入られた家が次に入られないようにセキュリティ会社と契約するようなものでしょうか?ただ必ずしも良い方向で作用するわけではありません。花粉症などでは体を守ろうとする働きがむしろ悪い方向で作用してしまうのです。(良い反応=免疫反応、悪い反応=アレルギー反応)

〔おまけ2〕治療法のダイジェスト紹介

1)薬物療法
薬には主に抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬・ステロイド剤があります。
このうち抗アレルギー剤は、花粉の飛散する2週間前から予防的に服用しなければなりません。大抵の人は症状が起きてからあわてるのですが“備えあれば憂いは軽減...?”と言ったところでしょうか。また、ステロイドはマスコミなどを通じて副作用ばかり取り沙汰されますが医師や薬剤師の指導の下に正しく使用すれば心強い味方になってくれます。もちろん局所ステロイドは内服に較べて副作用も断然少ないのですが漫然と使用を続けることは慎みましょう。

2)手術療法
鼻腔の容積を広くすることによって、鼻づまりを解消する目的で行なわれます。

3)減感作療法
人為的に免疫をつくる方法で、言い換えれば体質改善治療です。成功率は50〜60%と高いのですが、治療開始当初は週1回の注射を打たなければなりません。頻度は3週に1回で済むようにはなりますが根本的に治すには3年以上の長期にわたります。多忙なサラリーマンにはちょっと厳しい治療法かもしれませんね。