眠りの科学〜“春眠暁を覚えず”
2015.02.17
1)“春眠暁を覚えず”

春眠暁を覚えず
処々啼鳥を聞く
夜来風雨の声
花落ちる事知る多少 孟浩然(漢詩の一説)

さて、この詩を科学的に分析してみましょう。冬と春はメラトニンという眠気を誘うホルモンが盛んに分泌されます。特に春は、ポカポカとした気候が相乗効果となって眠くなるようです。さらに、「夜来風雨の声」という一行に注目してみて下さい。一晩中眠れなかったので、風の音を耳にしていたのでしょう。作者は、“睡眠不足が原因で寝坊をしたことを春のせいにした”という解釈(曲解?)になります。

2)眠りの効用

「成績優秀な人はよく眠る」 〜脳の休息
アメリカのどこかの州(記憶が不鮮明)のデーターによると 成績優秀の学生の平均睡眠時間はたっぷり7.5時間だったそうです。テレビゲームやメールなどして夜更かしをすると、寝不足により学校での授業に集中出来なくなってしまいます。また、睡眠が不足すると知識が整理されず脳に定着しないこともわかってきました。(後程、レム睡眠のところで改めて説明します。)

「寝る子は育つ」 〜体の修復、成長
名前の通り、成長ホルモン(骨を伸ばし、筋肉を作る)が影響してきます。成長ホルモンは、就寝中の午後9時頃から午前2時までの時間帯(主にノンレム睡眠時)に多く分泌されます。また、運動後にも体を休息状態にすることによって分泌されることも知られています。スポーツ選手の合宿で練習の後、昼寝の時間が確保されている理由はここにあります。

「美人は夜つくられる」〜美の形成
成長ホルモンの作用により肌の表皮細胞の新陳代謝が活発になりみずみずしい美しい肌になります。寝不足の朝は、顔にクマが出来たりしますよね。さあ今日からは、高価な化粧品よりも成長ホルモンの分泌を促がす早寝習慣を始めましょう。

3)睡眠のメカニズム

朝の光を浴びる(メラトニンの分泌減少) ⇒ 体内時計のリセットスイッチON ⇒ 14時間後に脳の松果体へ信号送信,メラトニン(睡眠誘発ホルモン)分泌 ⇒ 1〜2時間後、メラトニン量増加 ⇒ 入 眠     

(紐解き1)ブルーマンデー
日曜日の遅い時間に起きると、朝の光を浴びることが出来ません。月曜日になっても体内時計はずれたままの状態なので眠くて憂鬱になります。

(紐解き2)サマータイム
夏は日の出が早いので1日をその分だけ早く始めようというルールのことです。上記のメカニズムから言えば、人間の生体リズムに合わせた合理的な考えと言えます。ただ、自分一人だけで始めるわけにはいかないので実現するのは難しいかもしれません。 (仕事効率が上がるのでクールビズ以上の経済効果も期待できると思うのですが?)

4)体内時計は一日25時間?

人は誰しも昼夜の周期に合わせて体のリズムを刻む“体内時計”を持っています。この“体内時計”は脳の奥深く視床下部に位置しますが、地球の自転に合わせ太陽の光を取り込むように太古より生命を維持するために獲得してきたものです。太古の地球の自転は現在よりも遅かったことは証明されているようですが、もしかしたらその頃の遺伝子を引き継いで人の体内時計は25時間周期になったと考えられないでしょうか?(個人的な仮説ですが...)25時間周期だから眠いのですかね...?

5)レム睡眠とノンレム睡眠

レム睡眠は、爬虫類や魚なども行っている原始的な休息法で、体は休んでいるのに頭はほぼ起きています。人間の場合、新しい情報のインプットがないこの状態のときに脳の中で情報の整理が行われているそうです。一夜漬けが成績に結びつかないのはこのことから証明されるのではないでしょうか。一方、ノンレム睡眠は大脳が発達して脳を休ませる必要ができて生まれた休息法です。人間は睡眠に入ってからの最初の180分は深い眠りのノンレム睡眠でその後はレム睡眠とノンレム睡眠を90分周期で繰り返します。

6)心地よい眠りにつくためのテクニック〜羊を数えるよりいいかもw

(a)インシュリン効果
昼食をドカ食いすると、午後から眠くて仕事にならないという経験はお持ちでしょう。これは、炭水化物がインシュリンの分泌を促し、脳に作用してノンレム睡眠が多くなるからだそうです。インシュリンは、眠りの質を高めるキーワードの一つかもしれませんね。無理なダイエットは不眠の元ですから、バランスのとれた食事をしましょう。

(b)寝る前にコップ半分のミルクの奨め
肉や魚、卵、牛乳などに含まれるトリプトファンという栄養素も、快適な眠りに関係することがわかっています。トリプトファンは必須アミノ酸の一種で、睡眠情報を伝える神経伝達物質のひとつであるセロトニンをつくるからです。カルシウムも神経伝達をスムーズにすることから、二つを豊富に含んだ牛乳は睡眠を促す効果がある食品としてお奨めです。

(c)40度のお風呂とハーブが効果的
入浴でリラックスし、よい眠りをつくるには、ポイントがあります。お風呂の湯加減と、入るタイミングです。40度位のぬるめの温度で、眠る30分〜1時間前までに済ませるようにしましょう。 ハーブ風呂やハーブ茶もおすすめです。ラベンダーやカモミールなどはその代表格です。

(d)夕食後のカフェイン摂取や睡眠薬代わりの寝酒を避ける

(e)睡眠は人それぞれ、元気はつらつが快適な睡眠のバロメーター(意識し過ぎない)